Blackbird glass works 色、光、祈り、彩り。

光が通り抜ける、ガラスの色模様。まるで息を吹き込まれたようにふわりと淡く優しくなったり、きらりと光彩を増したり、美しく表情を変えていくステンドグラス。そこに内包される、儚さと、祈りと、自由な意思。つくる人も、繊細だけれど自由な女性(ひと)。 (2017年に取材したものです)
色と光に魅せられて
ブラックバード・グラス・ワークス(Blackbird glass work)の小さなアトリエ。東京から甲州市に移り住んだステンドグラス作家・山本香織さんがその主です。 「“色”に興味がありました。だから“色”に携わる仕事がしたいと思っていました」。色と光。ふたつとして同じ色模様のない板ガラスの組み合わせ。ステンドグラス制作に惹かれ、弟子入りできる工房を探すうちに、甲州市塩山で一切機械を使わず手作業で仕上げる、紛れもない“ステンドグラス職人”に出会います。23歳、若さに身を任せ、引き寄せられるかのように山本さんはこの道に入りました。
3年ほどの修行を経て、ブラックバード・グラス・ワークスとして独立。「屋号名は、the BEATLESの『Blackbird』のそれですよ(笑)。朝焼けに黒く映る鳥のシルエットが大好きなんです。色を通して幸せになってもらうための“影”の立役者でありたいという思いから“Black”の響きもしっくりきました。独立した今も絶えないのは自然に惹かれる気持ちです。理由は自分でもわからないのですが、感謝だったり、憧れだったり、未知だったり、色んな思いがそこにあります。だから、季節が来れば栽培チームに加わってぶどう畑へ。その土地でしか味わえない自然のつながりに重きを置いて、そこから自身の物作りやデザインにつなげていきたいと思っています」 。

心に安らぎを与える作品を
降り注ぐ光に透ける色鮮やかな煌めき。教会堂のステンドグラス、住居の窓や扉といった大きなものから結婚式のウエルカムボード、壁飾り、ランプシェード、フォトフレーム、プレートまで、様々な作品を手がける山本さん。共通するのは、それらがそっと日常に溶け込むということ…。「ステンドグラスは、教会で宗教観を伝える手段として、窓などに使われてきた西欧文化のもの。でも、和風空間と相性がとても良い。小ぶりなもの1つでも、空間を左右する存在感を放つと思います」。
得意なのは、ぎらぎらとした派手なデザインよりも、和ともとれるシンプルなデザイン。山本さんは、もっとステンドグラスを建築に取り込む提案をしていきたいそう。「私は私のつくるステンドグラスが心から喜ばれるものになったら嬉しいです」。
様々なジャンルの書籍と色鉛筆、鉄製の道具とレコードのように並べられた板ガラス。ガソリンスタンドの跡地を利用した小さなアトリエで、ふたつとない普段使いの芸術が生まれます。ただ、美しいものをそばに置きたいと思う。ステンドグラスを手に取るきっかけは、そんなことで十分かもしれません。

https://blackbirdglassworks.wordpress.com
(家みつかるvol.3より抜粋)