畳から未来を想う
山梨で100年の歴史を誇る「堀田畳製作所」が手がける畳。日本古来の伝統的な畳づくり、その技術と仕上がりの美しさは、いつの時代も変わることがありません。畳にまつわる知られざる世界や魅力を伝えます。
畳を知る
日本で発祥し発展してきた伝統的な床材である「畳」。その歴史は実に古く、奈良時代にまで遡ると言われています。一歩足を踏み入れるだけで私たちを極上の癒しへと誘う畳空間。ここ山梨で100年の歴史を誇る堀田畳製作所が手がける畳は、現在数ヶ月待ちです。三代目市助である堀田登喜夫氏、四代目堀田誠道(まさみち)氏を訪ね、畳の魅力について問うてみました。
畳は、畳床と呼ばれるワラを積んだ芯材に、い草と糸で織り上げた敷物状の畳表を張り、その縁がほぐれないように畳縁という綿や麻、化学繊維等の布を用いて縫い付けてある床材のことです。天然い草は、畑に苗を植え付けてから約3年の歳月を経て収穫され、畳表になる非常に貴重な農作物。収穫したい草を織り上げ、畳表に仕上げるまでを農家が兼任するという大変珍しい伝統文化の一つでもあります。堀田畳製作所の畳は、その高級品と言われる天然い草の畳表を用いて畳を仕上げ、約100年もの間、私たちの暮らしを快適に守り続けてきました。
畳の暮らし、畳文化の継承
畳表の織り方、畳縁の色や柄によって、その空間を利用する人や住まう人の身分が分かる……。日本に古くから伝わる伝統文化には、すべてに意味があり、もちろんそれは畳の世界にもこうして伝承されています。 「寺院は宗派によって畳表の織り方が異なり、茶室等の格式高い和室に使用する畳縁には決まりがあることなど、高い知識と技術がなければ成し得ない奥深い世界です。また、畳一畳は全て同じサイズと思われがちですが、地域によってさまざまで、もちろん家づくりを任されている設計士さんによっても配置の仕方が変わってくるでしょう」と市助氏。
昨年、畳の本場京都から戻った若干25歳の4代目誠道氏は「若い畳職人が数少ないここ山梨で、僕が京都で培ってきた知識と技術を継承していきたいと考えています。真の畳は、実に暮らしを快適にしてくれます。それは暮らしている人にしか分からないことなのかもしれません。だからこそ、本物を伝えていきたんです」と語ります。
暮らし方や働き方が見直されている昨今。訪れる度に、ふわりとい草が香り、足の裏を程よい弾力で刺激してくれる畳空間は、忘れかけていた家族の温もりを呼び起こしてくれるよう。伝統文化と現代が融合し、新しい畳の在り方、そして魅力を発信し続ける堀田畳製作所は、昔も今もそしてこれからも、地域の人々の未来の暮らしを、畳を通じて守り続けていくのでしょう。
https://www.hotta-tatami.com
(家みつかるVol.7より抜粋)