自然と遊ぶ、ヨクトの暮らし
美しい山々と清らかな水。雄大な大自然に魅了され移り住む人が増えてきている北杜市白州町。厳しくも優しい自然を愛し、ともに暮らす人は、自然との上手な付き合い方を知っています。(2017年に取材したものです)
ヨクトの暮らし、「持ち運べる家具」
美術大学卒業後、伝統工法建築を得意とする工務店で大工として基本を学んだのち独立した古川潤さん。一から丁寧に仕上げる家具作りを学ぶため、スウェーデンHDK大学STENEBY家具デザインコースに入学し、約4年間をスウェーデンで過ごしました。2013年帰国後、古川さん家族が暮らしの場所に選んだのは、北杜市。奥さまの佐藤柚香さんは、スウェーデンの風景を思わせるこの場所を気に入ったのだ、と教えてくれました。
デザイナーである奥さまもまた、美術大学卒業後、古民家再生を主とする設計事務所に勤務したのち、独立し設計事業をするかたわら、古材・古道具屋を営んでいました。古川さんと結婚、先にスウェーデンへ向かったご主人を追いかけるかのようにお子さんを出産後すぐにスウェーデンへ。佐藤さん自身もHDK大学STENEBYテキスタイル・フリースタンディングコースで学びました。
「私たちは、暮らしの中から出た疑問や不便、利便をカタチに変え、その中で使い手が自由にアレンジできる余白や空白を残したデザインを大切にしています。コンセプトは『持ち運べる家具』。持ち運びができて、使い方も色々で、自然と遊ぶことのできる家具を製作しているのです」と佐藤さんは話してくれました。
日本の伝統文化とスウェーデンの技術を融合
一つの作品を何度もなんども使っては相談し改良する…を繰り返すという古川さん夫婦。誰が見ても完成しているように見えるが、まだ改良途中と苦笑する作品もありました。そんな2人のこだわりが認められ、ドイツのデザイン賞にて「Wood Speaker」が最優秀賞を受賞したのは2017年冬のこと。2人が長い月日をかけて完成させたこだわりの作品のひとつです。携帯電話をそっと中に入れるだけで、柔らかいアコースティックな音が響き渡り、心を潤す音色へと変化を遂げます。車のドリンクホルダーにもすっぽりと収まるし、ホルダーをつければ肩から掛けたり、木に吊るせるなど多様性に魅せてくれます。
雄大な山々と美しい水、自然と当たり前のように暮らすスウェーデンの日常は、どこかここ山梨と似ているのかもしれない。日本の伝統文化とスウェーデンの技術を融合させたシンプルな家具を、使い手によって自由に暮らしの中へ取り入れていく、インとアウトの境目がない家具…ヨクトの家具にはそんな印象を受けました。まだ歩み出したばかりの新しい家具の在り方を提案する「アトリエヨクト」の作品は、私たちに愛らしくほのぼのとした日常を用意してくれそうです。